(ヨハン・セバスチャン・バッハのバイオグラフィー研究発表)


人生の問い

過去、現在、未来、一瞬として止まらない時の流れ。
どんな高名な人も、ごく普通の人にも平等に与えられている、死への扉。
私たちはそこへ至るまでの間の、人生の旅の途中で、
自分の歩いた道のりを振り返り、自分の存在や未来に、
ふと疑問や不安を抱きます。自分がどこから来て、どこへ行くのか...。

バイオグラフィーとは、一般的には著名な人々の生涯や業績を、
綴ったもの、つまり<伝記>と理解されています。
中学や高校の教科書で、ガンジーやシュバイツァー、
へレンケラーやマリーキュリーなど、
だれしも彼らの伝記の断片に触れた記憶があるでしょう。
また書簡集や日記などに加えて、自伝を残している人物も少なくありません。
歴史上の人物や有名な芸術家など、特別な一生は、今も昔も
ドラマのテーマとして人気のあるものです。
けれど近年では、そういった著名な人々の生涯にとは別に、
社会的な大きな事件を縦糸に、ごく普通の人々の、個人的な物語を横糸に
したような作品が目に付くようになって来ました。
また、個人を越えて、大きな川の流れを追うように、
何代にもわたって一つのテーマを見つめて描かれる、
作品も生まれています。

かつて、一般のほとんどの人には、
今ほど自由も権利も与えられていませんでした。
時代の制約のもとでは、個人の意識の変革も望めないことだったでしょう。
けれど、現代に生きる私たちは、
自覚に基づいて自分の人生を見つめる機会に恵まれています。
偉人といわれる人々の生涯と、自分の一生は、
あまりにもかけ離れているように思えるかもしれませんが、
私たちは誰もが、たった一人しかいない私、
かけがえのない存在として、
それぞれ貴重なバイオグラフィーを持っているのです。
例えば、あなたが注目されることの少ない、
脇役のような人生を生きているとしても、
あなたの人生では、
やっぱり他の誰でもない、あなたが主役なのです。