四季の窓辺4


2024年3月

クロイツの窓辺

春めいたと思っていたら
雪が降り続き

いつになく

木々が華やいでいると

見えたのは雨氷だった。
 *

そのまま3月が来て

フキノトウが顔を出しようにも

大地は今も雪に覆われている。

 *

待つ

春を待つ

ゆったりと待つ。

木の芽と

鳥たちと

いっしょに

待つことを楽しんで

春を待つ。

こんな3月もある。



2024年2月

クロイツの窓辺

この辺りでは

真っ先に

春を告げるダンコウバイの

蕾が膨らみ始めた。
長く雪で覆われていた

大地も少しずつ広がって

あとひと月もすれば

そこここに

可憐な山野草の

花が咲き始める、

はず。

 *

キーンと冬の青空に

響いていた音が遠ざかり

いつしか峰々が霞みだす。

 *

姿は見えないけれど

どこかの梢で鳥がさえずっている。

ああ、冬が逝ってしまう。

うれしいような

淋しいような



2024年1月

クロイツの窓辺

年の初めは、

たとえ、いろいろあったとしても

ひとまず気分があらたまり

夢とか抱負とか、希望といった言葉を

口にしてみたくなるものだけれど。

 *

あまりに過酷な幕開けを

どう捉えていいのか、

言葉を失います。

けれど

朝が来て、

日が昇り、日が沈む

太陽や月、星々は変わらず空を巡っている。

それを見ると

やっぱり、試されているのだ

どんな時にも明日を信頼することを。

 *

この黄色い花は
希望を失いかけたときの助け手

ゴース(ハリエニシダ)

 



2023年12月

クロイツの窓辺

八ヶ岳自然文化園で

月に1度、定点観察会をしている。

ひとりでは、続かない意志の弱さを

仲間がいると、補ってもらえて

長続きするのは本当にありがたい。

ハードルをあまりあげず、

ゆるやかに、でも決して切らさず

細く長く続けていこう。

  *

冬、多くの木々が葉を落とすと

目立ってくるのが、ガンの治療薬として

知られているヤドリギだ。

  *

白っぽい実をつけるセイヨウヤドリギには

お目にかかったことはないけれど、

その亜種の緑黄色の実をつけるヤドリギに加え

橙赤色の実のアカミヤドリギなど

種類の違うヤドリギが、1本の木に

寄生していたりする。

また、落葉するヤドリギ(ホザキヤドリギ)は

実だけが残るので、遠くから見ると

黄色い花が固まって咲いているようにみえる。

  *

この辺りはヤドリギの宝庫、

あまりにヤドリギだらけなので

私たちはまるやち湖から続くこの道を

愛情をこめてヤドリギロードと呼んでいる

 



2023年11月

クロイツの窓辺

八ヶ岳の落葉は

カラマツに始まり、カラマツに終わる。

9月にもなれば、はやばやと

カラマツは金の針のような雨を降らし始める。

そのうちに、ヤマザクラやダンコウバイ

ナナカマドやシラカバも

一瞬華やかに、そしてやがて落葉する。

ヤマモミジの紅葉はゆっくりだ。

11月に入った頃

あたりは燃えんばかり。

ナラはしぶとい

枯葉はなかなか落葉しない。
 *

雪便りが届き始めても

カラマツの落葉はまだ続く。

車に屋根に、そして人の肩にも降り積もる。

 *

道路が落葉で埋まっても

誰も文句を言わない。
これがなかなかうれしい。

踏むといい音がするよ。

2023年10月

クロイツの窓辺

いつもなら、この辺りでは
初夏の頃になると
アサギマダラが
ふ~わり~ふわりと
優雅に舞う姿が見られるのだけれど
この夏は、暑すぎたのか
全く見かけず
いったいどこへ?
 *
けれど
やっと最近、
フジバカマやアザミの
まわりで飛んでいる姿が
見られるようになりました。
 *
午後の日差しを浴びて
前翅の浅黄色、
後翅はひときわ鮮やかなオレンジ色に。
ためつすがめつ、うっとり。


2023年9月

クロイツの窓辺

久しぶりにブラックアイドスーザン
(黒い瞳のスーザン)に出会いました。
キク科オオハンゴウソウ属
ルドベキアとも呼ばれています。
オオハンゴウソウは、
今では特定外来生物に指定されて
ちょっと邪魔者扱いですが…。
 *
初めてこの花を意識したのは
北アメリカ、シェアラネバダの山中でした。
鮮やかな黄色の舌状花に囲まれて
中心の黒っぽい頭状花、
黄色く見えるのは頭状花の雄蕊です。
ある朝、そっと手を添えたとたん
みるみる花粉の黄色がぐるりと輪を描きました。
まるで私の何かと呼応するかのように。
 *
「おや、スーザン、目を覚ましたの?」
思わず私はそうつぶやきましたが
その時、私の内なる影に
光が当てられた気分になったものです。


2023年8月

クロイツの窓辺

高原では秋の気配が漂い始めました。
窓辺につるしたリュースターに日が差し
部屋のあちこちに虹を作るようになると
もう夏は終わりです。
 *
久しぶりに八ヶ岳の文化園に行くと
木漏れ日の中で
そこだけスポットライトを当てたみたいに
レンゲショウマが咲いていました。
あまりの可愛さにしばし見とれ
上から下から横からと
眺め尽くしました。
 *
湿地園ではツリフネソウが花盛り、
キンミズヒキやオミナエシ、アサマフウロにユウガギク
夏の終わりと秋のはじめが交じり合い、響きあっています。
足元には、薄桃の小さな花
アキノウナギツカミ
なんで、こんな名前が付いたのかしら?


2023年6月

クロイツの窓辺

3年前の6月
今は我が家となった山荘に出会った。
敷地の入口には大きな青楓が揺れて
一目で心を奪われた。
家との出会いも
恋愛のようなものだ。
  *
訪ねてきた人が
口を揃えて
ずっと前から住んでいたみたいね
という。
  *
私を育み、人生の基盤を作った
生まれ故郷の伊勢、温暖で静謐で
伊勢神宮のありがたさにも無自覚だった。
そして
人生で最も長く、
実りの時を過ごした愛知を経て
今、ここにいることの不思議。


2023年5月

クロイツの窓辺

雨上がりの朝
木々を揺らす風の音
カッコウの声が森に響く。
泣きたくなるような柔らかな緑
二度とないこの瞬間に、アリガトウ
  *
八ケ岳の山懐で迎える3度目の初夏
自然の中に入り込んでいるのは私の方
できるだけ植生を壊さぬよう
邪魔せぬよう
静かに住みたい。
  *
敷地内に自生する植物たちに
まだ十分、挨拶ができていない。
目が慣れていくには時間がかかる。
初めての年に見つけたのは
ヒゲネワチガイソウだった。
エイレンソウ、マイヅルソウ
少しずつ知合いが増えていき
ここが、私の居場所になっていく。


2023年4月

クロイツの窓辺

八ヶ岳自然文化園で、
定点観察を始めて一年、
このたび、ハルニレ(エルム)の
開花をしかと見届けました。
ただし樹高が高く
観察するには遠すぎる。
泣けます。
双眼鏡は必携です。
  *
この木が今、まさに満開だと
誰が分かるでしょうか。
分かる人にしか、分からない。
その優越感(単なる自己満足)に浸りつつ
花の付いた枝が落ちていないかと
うろうろ探す私たち・・・
ああ、一枝ほしい。
  *
地味な花ですが、
花盛りゆえに
おや、ここにもエルムが、と別のエルムも発見!
何ごとも、与えらればかりではなく
自分で掴みとることに喜びがあります。


2023年3月

クロイツの窓辺

春の遅い八ヶ岳山麓でも
今年は早くも枯葉の間から
フキノトウが顔を出しました。
天ぷらにフキ味噌
早春の楽しみが増すこの頃です。
  *
鳥のさえずりに交じって
キツツキのドラミングも聞こえます。
なんとのどかな春の響き
  *
我が家の外壁はキツツキたちの
好みに合っていたようで
コゲラ、アカゲラ、アオゲラと
寄ってきてはドラミング・・・
それゆえ見事なまでに穴だらけ。
思い切って昨夏、
外壁をこげ茶から青灰色に塗り直したところ
ぱったり来なくなりました。大成功。
といっても、目の前のカラマツにはやってきます。
いったい、アカゲラたちの目に
この家はどんなふうに映っているのでしょうか。


2023年2月

クロイツの窓辺

晴れた午後
思い立って御射鹿池までひとっぱしり
雪が残るこの季節に
ここを訪れたのは初めてです。
 *
湯みち街道に入ると
「今日は通行可」の看板が立っている。
ってことは、
不可の日もあるってことね。
ラッキーでした。
連続するヘアピンカーブを上って
標高1530m 
雪かきされた道は苦もなく走れますが
周辺は雪が積もっています。
そして、さすが人気のスポット
県外からの車が並んでます。
 *
あいにくさざ波が立ち
鏡のような、とはいきませんが
この静謐さは冬ならでは。


2023年1月

クロイツの窓辺

八ケ岳山麓で迎える三度目の冬
 *
振り返れば最初の冬は、
引越しの真っ最中に雪が降ることもなく
穏やかで、恵まれていた。
なんでもそうだけれど
あとにならないと分からないことが
たくさんある。
 **
生まれ故郷の伊勢や
大人になってからのほとんどを
過ごした名古屋と比べ
格段に厳しい山の気候だけれど
寒ければ、まず着こむ。
なんというシンプルさ。
***
都会暮らしの時とは大違いの
衣類のバリエーションの少なさが
ちょっと笑えるけど。

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